『トイ・ストーリー4』の好き度
多くの人が「3で綺麗に終わったんだからやめておけばいいのに…」と思っただろう「トイ・ストーリー」シリーズ。
今までの「トイ・ストーリー」シリーズを本道とすると、『トイ・ストーリー4』は「ウッディ」にフォーカスを当てた、ある意味スピンオフ的な「ウッディ物語」とでもいうべき作品でした。
伝えようとしてることはとても共感できたけど、ちょっとビターな味付けで面食らったのも事実。
『シュガー・ラッシュ:オンライン』に続き、ピクサーにまたこんな苦い思いをさせられるとは…。
『トイ・ストーリー4』のスタッフ
- 監督:ジョシュ・クーリー
- 製作:ジョナス・リベラ マーク・ニールセン
- 製作総指揮:アンドリュー・スタントン、リー・アンクリッチ、ピート・ドクター
『トイ・ストーリー4』のあらすじ
ウッディやバズ達のもとの持ち主だったアンディから、おもちゃを引き継いだボニー。
ボニーは女の子ということもあって、アンディ時代は主役扱いだったウッディはどんどん出番が少なくなり、クローゼットの中に入れられたままの事も多くなります。
そんなある日、ボニーはゴミ箱から拾ったプラスチックフォークを改造した「フォーキー」というおもちゃを作ります。
「フォーキー」はゴミ箱出身ということもあり、「自分はおもちゃでなくゴミなんだ」という思いが強く、スキを見てはゴミ箱や外の世界に逃げようとします。
それを毎回ウッディが止めるわけですが、そのクセがなかなか直らず、ついにフォーキーは脱走してしまいます。
フォーキーはボニーの1番のお気に入りということもあり、ウッディは必死でフォーキーを探にし行きますが、そこでウッディと恋仲でもあった過去に捨てられたおもちゃボー・ピープに再会します。
ボー・ピープは淑女といったイメージが強かったですが、再会した彼女は捨てられた後に行き着いたアンティークショップから1人で抜け出し外の世界で仲間を見つけ、たくましくサバイブする強い女性に変わっていました。
ボー・ピープの“おもちゃとしての新たな生き方”を目の当たりにしたウッディは、これまでブレずに持っていた「持ち主に遊んでもらう事こそがおもちゃの1番の幸せ」という価値観をここで初めて揺らがされます。
「ある場所で必要とされなくなった者は、どう生きていくか…」、ウッディは最後まで悩み続けますが、ついには自身の今後の生き方の答えを出します。
今回は、思った以上にちょっとビターで大人テイストな話でした。
『トイ・ストーリー4』の感想
ついに”レギュラー落ち”したウッディ
作中、もとの持ち主アンディからウッディ達を譲り受けたボニー(女の子)の視線がウッディにいくことが1度も無かった様に思います。
これはもうあからさまなので、このことから本作ではウッディがレギュラー落ちしたおもちゃであることが明確にわかります。
序盤でボニーと遊ぶおもちゃたちはクローゼットから出されますが、そこにウッディの姿はありません。
ウッディをはじめ“選ばれなかったおもちゃ達”はクローゼットの隙間から、ボニーたちのおままごとを見ることしかできません。
過去作でも、レギュラー落ちおもちゃについて語られることはありましたが、あくまで脇役や敵役でした。
トイ・ストーリーで主人公目線で「必要とされなくなったおもちゃ」を描くのは初めてです。
映画が始まってからはついにウッディーが「こっち側になるとは…」と感じて、ちょっとショックでしたね。
「必要とされなくなったおもちゃ」をついに正面から描く
今までのトイ・ストーリーは「持ち主に必要とされなくなったおもちゃ」に対して明確な答えをだしてなかった様に思います。
それは、おもちゃに誠実な愛情を持っていた「アンディ」がいたからなわけですが。
アンディという、おもちゃに対して深い愛情を注げる素晴らしい持ち主がいたから、レギュラー落ちしたおもちゃはウッディの周りにいてもさほど問題視されなかったし、外界でレギュラー落ちしたおもちゃと出会っても「君もアンディの元に行こうよ!」といえば解決できたんです。
ただし、このアンディー任せの解決法は「持ち主に必要とされなくったおもちゃは、その後の人生をどう生きたらいいか」という問いに対する明確な答えにはなっていないわけです。
そのためアンディと綺麗に決別した後の物語である、「トイ・ストーリー4」でついにこの問題に向き合う事になりました。しかも、当のウッディー自身が必要とされなくったおもちゃの立場になって、です。
自分が必要とされなくなった経験を思い出す
本作を観てたらなんとなく高校の野球部時代を思い出しました。
野球部の頃、レギュラー落ちの控えのまま3年の夏を終え引退することが確定したんですが、その時に「もう表舞台には立てないけど、ここにい続ける」or「まだ途中だけど部を辞める」の2択で迷ったんですよね。
「チームを支える、という意味で存在意義はあるという気持ち」と「試合に出る事が目的でそれが不可能にならここにいても意味がないという気持ち」でせめぎ合ってたんですけど、ウッディを見て「その時の感覚に似てる」と思いました。
私は結局、本作の序盤のウッディのように「控えの立場としてチームを支える側に回ろう」的なマインドを作って、最後の試合が終わるまで部活に残りましたけど、「自分がメインメンバーとして必要とされてない場所にいつづける」ってけっこう大変なんですよね…(もちろん、チームやメンバーに愛着はあったから勝ってはほしかったけど)。
本作のウッディを見てたら、当時の事を思い出して「ウッディ、すげぇわかるよ〜( ´Д`)」と感情移入しちゃいましたねぇ…ええ、ええ。
でも、“恋人にフられる”とか“仕事で担当を外される”とか、“小学生がチーム分けする時にやる、代表2人がじゃんけんで勝った順にチームにほしい人物を選んでいく残酷なアレ”とかでもいいですけど、「自分が必要とされてないかも?」と感じる場面ってどの年代でも普通に溢れてますよね。
だから実は今回のウッディの感じは誰しもが共感できると思います(逆に特定のおもちゃに興味を無くし邪険に扱うボニー側にも共感できて、ちょっと心が痛む)。
ボーのキャラクターから見える、幸せの価値観の変遷
ボーは自分の道を自分で切り拓きまくってる、現在の価値観にマッチするかっこいいキャラクターになってましたね。
「結婚しなくても、家族を作らなくても、組織に属さなくても、幸せは手に入るし、型に当てはめるなよ」ということを体現してるというか。
ただ、私自身もその信条はすごい共感するし、ウッディも結局はその考えに共感していくわけですが『トイ・ストーリー』1作目でウッディが言っていた「おもちゃは子供と遊んでるときが一番幸せ」という信条とは全く反対の決断なわけですよね。
1作目は1995年(24年前!)に公開されたので価値観の変遷があるのは当然っちゃ当然ですが、作り手たちがそこに意識的で、過去に提示した価値観が現代に沿わなくなってきたと判断するや、キャラクター自身を最新の価値観に沿ったキャラに変化させていく、というピクサーの抜け目なさは流石だなと思いましたΣ (´Д` 😉
質感表現というか、映像がリアルすぎないか…
もう映画見始めてすぐ感じましたけど、「実写か?」と思うくらいおもちゃの質感表現がリルでした。
“そこにある感じ”というか、おもちゃの実在感が本当にすごかったです。『トイ・ストーリー』1作目とか2作目、3作目とかも普通にすごかった気がするんですけど、やはり技術は日進月歩、最新作はリアルさも常に更新していきますな…(;´Д`)
まさかのバズが脇役だった件
ちょっと残念だった事は、バズが脇役だった点。キャラも『トイ・ストーリー』の頃の様な天然成分強めに戻ってましたし。
でもまあ、「トイ・ストーリー」シリーズは確かにウッディとバズのW主人公だけど、今回はスピンオフの「ウッディ物語」だからしょうがないのかなと。
まあ、単純にバズをもっと見たかった気持ちはありますが(・ε・)
まとめ
やはり「トイ・ストーリー」自体は3で完結してた気もしますが、ウッディ個人の話として本作『トイ・ストーリー4』はとても楽しめました。
関連作品
『トイ・ストーリー』
『トイ・ストーリー』1作目であり、ピクサーの1作目でもあります。今から24年前とか信じられないですね…。
『トイ・ストーリー2』
2はちょっとテイストが変わった気がしますが、すごい好きです。
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