『ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち』の好き度
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』が好きなので「似た感じかも」と思い観てきました。が、思ったより金融ネタは少なめで、どちらかというとトンネル工事モノでしたが、なかなか楽しめました(´ε` )
『ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち』のスタッフ・キャスト
スタッフ
- 監督:キム・グエン
- 製作:ピエール・エバン
- 製作総指揮:ブライアン・カバナー=ジョーンズ、フレッド・バーガー、マリー=ガブリエル・スチュワート、ハイディ・レビット、キム・グエン
- 脚本:キム・グエン
- 撮影:ニコラ・ボルデュク
- 美術:エマニュエル・フレシェット
- 編集:アルチュール・タルノウスキ ニコラ・ショドールジュ
- 音楽:イブ・グルムール
キャスト
- ヴィンセント:ジェシー・アイゼンバーグ
- アントン:アレクサンダー・スカルスガルド
- エヴァ:サルマ・ハエック
- マーク:マイケル・マンド
- サラ・ゴールドバーグ
- アンナ・マグワイア
『ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち』のあらすじ
ニューヨーク証券取引所とカンザスのデータセンターを最短距離の一直線に光ファイバーで繋げば最速の通信を実現でき誰よりも速い株取引で利益を総取りできる、それが「ハミングバード・プロジェクト」。
投資会社で高速取引の遅延改善を担当する主人公ヴィンセントと従兄弟のアントンは、会社をやめて「ハミングバードプロジェクト」の実現に動き出します。
山脈、川、公園、人の家、なにがあってもまっすぐに光ケーブルを埋設しなければならない超ハードなプロジェクトですが、緻密な計画をたて、企業経営者から資金調達し、ケーブルが通過する土地を買い占め、数々のトラブルに見舞われながらも着々とケーブルを伸ばしていきます。
しかし、以前いた証券会社の元上司から妨害行為を受け、さらにはヴィンセントが癌にかかった事で、プロジェクには徐々に分厚い暗雲が立ち込めます。
それでも彼らはなかば取り憑かれたようにプロジェクトを進めていきますが、工事完了の少し前に、ヴィンセントは病に倒れ、元上司たちは新技術を用いたアンテナ通信でより高速の通信を可能にしてしまいます。もはや意味のなくなった「ハミングバードプロジェクト」。しかし、それでもヴィンセントたちはケーブルの埋設工事を完了させます。
すべてが終わってから、ヴィンセントは病気で弱った体にムチを打ち、最後まで土地を売ろうとしてくれなかった農夫(結局強引に地下を通した)のもとを訪れ、当時の非礼をわびます。
テクノロジーによる高速の金融取引などとは正反対の実直な農夫たちの働きぶりを見たヴィンセントとアントンは、人生における真の豊かさについて考察しながら映画は終わっていた様な気がします(たぶんそんな感じだったよーな)。
『ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち』の感想
よく言えば”壮大”、悪く言えば”超手間のかかる”プロジェクト
本作にでてくる「ハミングバード・プロジェクト」は、もう超大変で超手間がかかるプロジェクトでした。ざっくりタスクを洗い出すと…
- 「1600キロ」ひたすらまっすぐの回線をひくためには、通過する土地の地下(およそ1万件)を買収しないといけない
- 地下部分だけで、これまでの生活は全く変わらないという条件でも、絶対に土地を売らないという頑固な人からも、粘り強く説得して土地を買わないといけない
- そのために企業経営者から資金調達をしないといけない
- 一直線に回線をひくだけでは不十分なことがわかり、通信速度をさらに速くするためのコードを考えつかなければいけない
- 掘削作業の現場監督、掘削作業員が必要
- 迂回なしで回線をひくので、山や川にあたっても一直線に通過できる特殊な掘削機械が必要
- 回線を引き終わっても新技術で他社がより速く通信できる事が判明したので、別のコードを考えさらに速度を速めないといけない
などなど。考えただけで途方に暮れる内容です。
しかも実際にプロジェクトを始めると「一難去ってまた一難…」というレベルではなく「同時多発的」に数々の困難が立ちはだかりまくるからもう大変。
映画の途中で見てるこちらが疲弊してくるというか。自分が(もちろんこんな大掛かりじゃないけど)小さなプロジェクトのリーダーをやってた時を思い出して、まあまあ嫌な気分になりましたね(;´∀`)
トラブル続きで落ち着く暇がなくて、目まぐるしく事態が動き続けてる感じというか。だからこそ映画を観てて「あー、おれこのプロジェクトの当事者じゃなくてよかった…(;´∀`)」と心底思えました。ある意味すごい感情移入できたわけで、いい映画体験です。
でも、この壮大なプロジェクトを主人公”ヴィンセント”は超やる気まんまんで進めていきます。
序盤の小汚い、でも味のあるパブでヴィンセントと従兄弟で同僚の天才エンジニア・アントンが計画を練っていくところなんかはもうノリノリで、「なにかが始まる時の高揚感」を共有できて、すげぇワクワクしましたよ。プロジェクトが進んでいくにつれトラブルが勃発し、高揚感より疲労感・危機感が増していくんですけどね(笑)
テクノロジーの最先端をアナログで解決する発想の転換が本作の肝
本作は複雑怪奇な金融理論や最先端の通信技術を駆使するのではなく、「一直線の最短距離で光回線を引けば迂回してる回線より速いでしょ」という単純明快な「アナログで物理的な方法」を用いるといころが印象的です。
「アナログで物理的な方法」はこれだけじゃなく、ヴィンセントの従兄弟で天才的な頭脳の持ち主アントンが通信処理速度を速くするコードを書きまくるものの、なかなか速くならず頭を悩ませませるシーンでもでてきます。
結局彼は通信スピードを速めるために新たなコードを開発するのではなく、光ケーブルの合間に何台も設置する中継機器の距離を当初の想定より離して置くことで、経由する機器の数を減らし速度を速めるというコードとか関係なさそうなアナログ的手法、けれども現状もっとも有効であろう方法を思いつきます。
私たちはとかくデジタル的、テクノロジー的に進化したものが最強!というイメージを持ちがちですが、その先入観に気を取られてると、こういうひらめきは出ないだろうな…といい勉強になりましたよ(´ε` )思わぬところにアイデアは眠っているというか、温故知新というか。
株式取引の本質が”速さ”に変わった時代
本作の舞台は「株式の高頻度取引」の登場で企業業績・社会情勢・政治動向などを考慮した上で株を売買する「本来的な株式取引」が影を潜め、通信の処理速度こそが儲ける上で1番重要なファクターとなった2011年頃。ある意味、”株式市場が狂っていた時期”といえる気がしました(詳しくは知らんが)。
そんな狂った株式市場の状況と、ヴィンセントやアントンの狂気じみたプロジェクト完遂への執念は見事にリンクしてたと思います。
というより、狂った状況がそれに関わる人々をどんどん狂わせていく、そのほうが近いかも…。なんて考えましたよ。
でましたお家芸!主人公ヴィンセント演じるジェシー・アイゼンバーグの早口演技
主人公ヴィンセントを演じたのは『ソーシャルネットワーク』で有名なジェシー・アイゼンバーグ。
ジェシー・アイゼンバーグのトレードマークと言えば、あの超早口セリフまわしですよね。本作も超速いです。普通にしゃべってても詰められてる様な気がしてくるので、けっこう嫌な汗かけます。
ジェシー・アイゼンバーグが演じたヴィンセントは、『ソーシャルネットワーク』のマークより独善的、天才的な感じはないんですが、なにがなんでも目的を達成しようとする強引さを持ち得ている点はけっこう近いものがあります。
まとめ
金融モノの映画といえば『マネー・ショート 華麗なる大逆転』を思い出しますが、本作は実はそこまで金融ネタがでてきません(それよりもトンネル掘ってる時間長い)。
でも、金にかんして命がけでマジになってる人たちがたくさん出てくる映画、という点では同じなので、金融モノ好きにはおすすめです。
関連作品
同じく金融ネタの映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』。大好きで何度も観てます。
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』の原作小説『世紀の空売り』の作者、マイケル・ルイスの著書「フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち」。原作本というわけではないですが、『ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち』の件が書かれてるらしい。読んでみたいです。
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