『ミッドナイト・エクスプレス』〜不条理獄中モノ〜

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『ミッドナイト・エクスプレス』の好き度

どうやら”脱獄モノ”映画らしいと聞きつけ「大好物なジャンルないか!」と胸を踊らせたものの見てたらだんだんとゲンナリしてくる自分もいまして。なかなかハードな内容でした(ヽ´ω`)

題名の「ミッドナイト・エクスプレス」は「脱獄」の隠語なのですが、本作は「脱獄モノ」というよりは「獄中モノ」といった方がしっくりくる感じです。

プリズンをブレイクすることにあまり重きは置かれず、それよりも、劣悪な刑務所に収監され過剰な罰を与えられた主人公がどんどん壊れていく…という「不条理劇」的な一面がある作品でした。

※本サイトは基本ネタバレです。

スタッフ・キャスト

スタッフ

  • 監督:アラン・パーカー
  • 製作総指揮:ピーター・グーバー
  • 製作:アラン・マーシャル デビッド・パットナム

キャスト

  • ブラッド・デイビス
  • アイリーン・ミラクル
  • マイク・ケリン
  • パオロ・ボナチェッリ
  • ジョン・ハート

あらすじ

Columbia Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

彼女ときたトルコ旅行の帰りに、“ガムテープで体に麻薬を巻きつける”というフランクな方法で大麻密輸をしようとした主人公ビリーは、見事にバレて現地トルコの刑務所に収監されてしまいます。

この刑務所がなかなかハードな環境でして。規律が厳しくないとても雑な作りのせいで各房への出入りはわりと自由、ただそのぶん無法地帯になっていて。殴り合いの喧嘩やナイフで刺した刺されたは当たり前。かなりテキトーに管理されてるタイプの刑務所でした(さすがに『暁に祈れ』ほどヤバくはないですが)。

まだ判決のでていないビリーは、「ここに何年入ることになるんだろう…」と不安な日々を過ごします。

しばらくしてアメリカから父親がきて、トルコでの裁判に明るい弁護士などを雇ってくれますが、

Columbia Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

どいつも

「もっと金を払ってくれよぉщ(`ω´щ)」

的なクソどもばかり。結局、禁固30年とめっちゃヘビィな刑がくだるという結果に(;´Д`)

深い絶望に襲われたビリーですが、それでもなんとか獄中で仲間を見つけ2〜3年やり過ごします。

しかし、仲間の囚人がチクリ屋の囚人にハメられ看守にボコられた事にキレたビリーは、チクリ屋を半殺しの刑(やりすぎ)にした事で、刑務所内の精神病棟に移されます。

その病棟が、地下洞窟にキャパオーバーの人員が収監されているという作りで、囚人はみな虚無状態になってしまうほど輪をかけて劣悪な環境でした。

ビリーも廃人化しますが、そこに旅行先で離ればなれになったきりだった彼女が面会に現れます。

数年ぶりに女性を見たビリーは、もう恥も外聞もなく本能的に興奮してしまい、面会室のガラス越しの彼女に「胸を見せてくれ」と懇願します。

Columbia Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

彼女は恥じらいつつも胸を露出し、それを見たビリーは発奮。

「おれはここを出る!」と決意します。

その後、看守長に別室にいれられ性交渉を強要されたビリーは、2人きりだったこともありタックルで反撃。事故ではありましたが、看守長は頭に突起物が突き刺さり死んでしまいます。

その後、看守長の服に着替えたビリーは刑務所の外になんとか脱出。喜びを噛み締めたビリーが大きくガッツポーズしたところで映画は終わります。

『ミッドナイト・エクスプレス』の感想

刑務所描写がちゃんとエグい

Columbia Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

「脱獄モノ」・「獄中モノ」、両者に重要な要素として「看守との確執」・「エグい刑務所描写」などがあると思いますが、「脱獄モノ」では「看守との確執」がより重要な要素だと思っていて、それがあればあるほど、脱獄の準備段階の際の「バレるかな?バレないかな?」のやりとりのハラハラ度があがるし、脱獄が発覚した時、看守が悔しがる表情への「ざまぁみさらせ〜(by桑原)」感もあがると思っています。

しかし一方で、「獄中モノ」「エグい刑務所描写」がより重要だと思います。脱獄描写がほぼなく、獄中生活メインで描かれる場合は「刑務所での生活がいかにキツイか」が強調されている方が主人公への感情移入の度合いがあがると思うんです。

「もう、嫌だ〜!!絶対無理、絶対無理!!」っていう感じを観ている側にも味あわせてくれるのがいい獄中映画かな、と。

本作はそういう意味で、もう劣悪な刑務所描写がありありと描かれており「自分なら1週間ともたず壊れる…(´ー`)キッパリ」と確信できたので、私的にはとてもいい映画でした。

基本的にずーっと主人公が”うまくいかない状態”で進んでいく「不条理劇」といえる内容で、劣悪な環境や、そこで人が壊れていく様もしっかり描かれているので、観ててけっこう暗くなります。
しかしながら、ラストにはカタルシスもあり観終わってみると、エンタメ作品としても十分に楽しめたなあ、というのが率直な感想でした。

とはいフィクションとして捉えたほうがいい

本作は実話ベースとなっていますが、とはいえストーリーはだいぶ”盛られている”とのことなので、あくまで悲惨な獄中描写はフィクションとして観たほうがよいと思います。

実際、トルコ政府は「こんな拷問をしていない!」とか「必要以上に悪く描きすぎてる」とか色々と抗議をしたそうです(確かに、実話ベースじゃないならかなりのネガティブキャンペーンになりかねない内容)。
他にもけっこうドぎつい描写がありますが、映画評論家の町山智浩さんによると、そうしたシーンはほぼ脚本のオリバー・ストーンの演出とのこと(性的暴行や、主人公がチクリ屋を舌を食いちぎる、恋人が胸を見せるシーンなどは創作部分だそう)。

印象に残ったシーンは割とフィクションなので、まあ基本そういう姿勢で観たほうがいいと思います(;´∀`)

脱獄モノの緊迫感も

Columbia Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

最後にとってつけた様に書きますが、本作は獄中描写がメインですが、中盤とラストに脱獄シーンもあります。

途中、仲間たちと脱獄を試みるシーンは、短いなりにも、計画を練ってそれを実行に移すまでのドキドキ感、ケイパーものっぽさがしっかりあって普通に面白いです。

またラストの脱獄シーンも、ここまで「希望が…!と思ったら地獄」の繰り返しだったので、「最後ちゃんと脱獄できるかなぁ?不条理劇的なラストだと悲劇的に終わる可能性もあるぞ゚!(´ε`;)ドキドキ」と最後までハラハラさせてくれたのでなかなか良かったです。

緻密な計画をねって…的な展開じゃないけど、「脱獄モノ」が好きな人も十分楽しめる展開でしたのでおすすめです。

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