『EXIT』〜コメディ×パニック=最強エンタメ〜

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『EXIT』の好き度

韓国映画『EXIT』見てきました。予想外にコメディ色強めで驚きましたが、めちゃくちゃエンタメしてておもしろかったです(・∀・)

『EXIT』のスタッフ・キャスト

スタッフ

  • 監督:イ・サングン
  • 製作:カン・へジョン、リュ・スンワン
  • 脚本:イ・サングン
  • 音楽:モグ

監督のイ・サングンは本作が初監督作品だそうです。にしてはとても完成度が高かったと感じました。毒ガステロが起きるまでの母親の古希祝いのくだりがちょっと長い気がしましたが、全体的よくまとまってたと思います(偉そうにすみません)。また名作『ベテラン』のリュ・スンワンが製作陣にいるのも見逃せないですね(-ω☆)キラリ

キャスト

  • ヨンナム:チョ・ジョンソク
  • ウィジュ:ユナ
  • ヒョノク:コ・ドゥシム
  • ジャンス:パク・インファン
  • ジョンヒョン:キム・ジヨン

知らなかったんですが、ヒロイン・ウィジュ役の方は韓国アイドル「少女時代」のユナさんだったんですね…。ユナは『ベテラン』にもでていたので、製作リュ・スンワンの影響でしょうか。クライミングもサマになってました。

また、主人公ヨンナム役のチョ・ジョンソクはミュージカル俳優として活躍し、「千の顔を持つ男」と演技力に定評がある役者さんだそうな。確かにこの役者さん、ヘタれっぽい表情もものすごいうまかったんですけど、キメる時の顔もマジイケメンでかっこよかったです。ちょっと東出昌大に似てます。

『EXIT』のあらすじ

韓国のある都心部、突如原因不明の有毒ガスが蔓延しはじめる。道行く人たちが次々に倒れ、パニックに陥る街——。
そんな緊急事態になっているとも知らず、70歳になる母親の古希のお祝いをする会場では、無職の青年ヨンナム(チョ・ジョンソク)が、大学時代に想いを寄せていた山岳部の後輩ウィジュ(ユナ)との数年ぶりの再会に心を躍らせていた。
しかし、上昇してくる有毒ガスの危険が彼らにも徐々に迫ってくる。ガスに触れてしまった姉と両親・親戚たちは、なんとか救助のヘリコプターで運ばれたが、取り残されたヨンナムとウィジュ。彼らの手元にあるのは、ロープとチョークと山岳部で鍛えた知恵と体力。地上数百メートルの高層ビル群を命綱なしで登り、跳び、走る出口は町の一番高い高層ビルよりも上!絶体絶命の中、決死の緊急脱出がはじまる!公式サイトから

 

『EXIT』の感想

ワンアイディアに思わせて、意外と色々な要素が組み込まれている

軸となる「毒ガスから逃げる」というアイディア

まず、毒ガスというアイディアが良かったですね。

「その建物から脱出せよ」という映画は多く存在しますが、「毒ガス」が蔓延して下からどんどん上がってくる…というテーマはなかなか斬新な気がしました。

例えば『タワーリング・インフェルノ』のような「火災」だと同一建物内を上に移動する、そして脱出すると話は終了になりますが、上昇してくる毒ガスだと上へ逃げてもガスに追いつかれるため、もっと高い建物への移動=横へ逃げるという展開も加わります。これによりアクションや話しの幅が広がっていたのが素晴らしかった!

実際、今いるビルの屋上に毒ガスが到達してきそうになると、隣のより高いビルへロープで渡る、という展開が何度かあるんですが、これらのシーンはスリリングで劇中でもっとも印象的なシーンになってました。

また、「ガスマスク」というアイテムの活用もお見事でした。ガスマスクのおかげで、「高いところからより高いところへ」というパターンだけでなく、「一度地上に降りて別の高い建物へ」という脱出パターンも足され、さらに「ガスマスクの効果は10分」と制限もあることで、タイミリミット・サスペンスの要素も加わり、より面白くなっていたなと。

「ギリギリでいつも生きていたいから by KAT-TUN(待ち合わせにギリギリになる事が多い人たちを指します)な人間としてはタイミリミット・サスペンスは感情移入が非常によくできて、とても手汗をかいてしまった…(;´∀`)

ちなみに、何も知らない日本人としては「街なかにガスマスクが設置されてるって…」とご都合主義的に考えがちですが、韓国では北朝鮮からのテロに警戒して駅などに普通に設置されているそうな。

「自信を取り戻すモノ映画」としても完成度が高い

とまあ、一見すると毒ガスから逃げるワンアイディアに見えますが、実はいろいろな要素が含まれた映画でしたよ。

例えば、主人公ヨンナムのキャラ。彼は大学も2浪して、就職戦線からも弾き飛ばされ、家族からの扱かわれ方も雑…という「落ちこぼれ」設定でしたが、ひとたび毒ガステロが起きたら、危険をかえりみず家族や後輩を救うために危険に飛び込んでいきます。

社会では落ちこぼれでも、「利他的な行動がとれる」という人として尊い行動がとれる、「おれだってやる時はやるぜ」と、「主人公が自信を取り戻していく映画」としてもかなり良くできていたと思います。

この映画、一度レールから外れると這い上がるのがキツイ韓国の学歴主義&就職戦線だったり、いまだ残る家父長制、職場セクハラなど、現代の日本でも抱えてるテーマを、コメディに包みつつも皮肉っぽく描いていて、”毒ガスアイディア一発”だけじゃない、幅の広さを感じました。

役者陣のクライミングスキルも迫力があった

本作の主人公ヨンナム演じるチョ・ジョンソクと、ヒロイン・ウィジュ役の少女時代ユナは、撮影前に登山技術を学び、ロッククライミングやワイヤーアクションのトレーニングを受け、劇中の大部分を自分で演じたそうな(´ε`;)スゲェ

確かに、序盤にヨンナムが催事場のビルの壁を登るシーンには抜群のリアリティと、だからこそ生まれる緊迫感がありました。
自分もボルタリングを何度かやったことがあるからわかるんですが、登っててきわどい箇所とか滑りやすい箇所とかを、ヨンナムがちゃんと意識して登ってるのがわかるんですよね。

だから、クライミングの途中で危険な所に差し掛かった時のヒヤヒヤ感はマジでヤバかった。私、手汗で手のひらがテロッテロになりましたから…(;´∀`)

ラストのラブ展開もあさっりめで後味スッキリ

本作はラブストーリー要素は少ないものの、主人公のヨンナムとウィジュが毒ガスから一緒に逃げているうちにだんだんと2人の絆が強まっていき、「くっつくかも?」と予感させるシーンがところどころにあります。

しかし、ラストは「ウィジュがヨンナムにまた会うことを提案する」だけで、2人の恋の結末はわからずじまいでサクッと終わります。

このあっさり具合がとても良かった!

最近だと『マスカレード・ホテル』見た時に思いましたけど、「2人はくっつきましたとさ…めでたしめでたし」みたいな恋の結末まできちんと描いてくる感じって、ラストにやられると、すげえ蛇足感というか、くどく感じるから苦手なんですよね。

本作はそれがなく、予感させる程度で終わっいたので、読後感的なものがとても良かったっす(´ー`)

パニック、ディザスター、サバイバル、というより純粋なエンタメ作品として楽しむ

本作はテロ事件が起きるまではコメディ満載に描かれますが、毒ガステロが起きると一点してシリアス度が高まります。特に主人公の姉が毒ガスを吸って運び込まれるシーンでは「地下鉄サリン事件」の嫌な記憶を想起した人も少なくないのではと感じるほどの不穏さがありました。

しかし、そこからは徐々にまたコメディ度が高くなり、主人公のヨンナムとウィジュが2人で逃げるパートに入っても要所要所でギャグが差し込まれます。

個人的には、コメディ要素は存分に笑わせてもらって最高だったんですが、スリルやサスペンス性は比例して減っていたと思います。

序盤に、毒ガス被害に遭った姉が意外とあっさり病院に運び込まれたり、主人公ヨンナムがビルの屋上まで壁を登る姿を見た家族のリアクションがコメディ的に演出されたりしていた事で、「本作では死者はでない」という本作のシリアス度のラインが観客にも伝わりました。

そのため、スリリングなシーンを見ても心のどこかで「まあ、助かるのはわかってるが…」という前提で見てしまい、本気でドキドキ…ハラハラ…する所までは行かない、という現象が起きていました(;´∀`)

私としてはそれでも十分すぎるくらい楽しめたからいいんですが、シリアス度が高いディザスタームービやパニックムービーが好きな人には、ちょっと物足りないかもしれません。なので、そういうジャンルとは思わず「エンタメ作品」と振り切って見たほうがより楽しめると思います。

まとめ

本作は、YouTuberがドローンを使って逃げるさまをライブ中継したり、スマホのライトを使ってヘリコプターに合図を出したりして、今まさに毒ガステロが起きたらこうなるだろうなあ、というのをリアルに感じさせてくれます。
また、セクハラ問題や就職事情などを主人公たちの設定に組み入れてて、テクノロジー描写以外でも意外と世相を反映したリアリティのある作品になってます。

現実では体験できない(したくない)事を疑似体験できる、「これぞ映画!」といえるよう良作でしたので、ぜひ観てみてください!

関連作品

好きな韓国映画の一部を紹介します。

『チェイサー』

ナ・ホンジン監督の名作クライム映画。

『悲しき獣』

こちらもナ・ホンジン監督の名作クライム映画。ちょっと変わった映画です。また、『チェイサー』と似たキャストなのに役者陣の雰囲気が全く違う…!という点も見もの。

『殺人の追憶』

ポン・ジュノ監督の名作。韓国の未解決事件がテーマです(最近容疑者が捕まったとか)。

『ベテラン』

『EXIT』の製作に名を連ねるリュ・スンワン監督の刑事モノ。こちらもコメディ要素強めですがけっこうエグくて面白いです。

『新感染 ファイナル・エクスプレス』

ヨン・サンホ監督作。世界的に見ても傑作なゾンビムービーでした。

『犯罪都市』

『新感染 ファイナル・エクスプレス』に出てブレイクしたマ・ドンソク主演の刑事モノ。凶々しい雰囲気と、マ・ドンソクがとにかく最高!な映画。

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