『バーニング・オーシャン』の好き度
「Netflix」にあった作品で、好物のひとつ「実話モノ」でもあったので鑑賞してみました。
先日、天ぷら油を熱しすぎて火事の一歩手前までいき、火の怖さを身をもって知った自分には、文字通り「火の海」になる船上が舞台の本作は、その時の思いが蘇りなかなかに怖かったです…(天ぷら油は無事鎮火しました)。
『バーニング・オーシャン』のスタッフ・キャスト
スタッフ
- 監督:ピーター・バーグ
- 製作:ロレンツォ・ディ・ボナベンチュラ マーク・バーラディアン マーク・ウォールバーグ スティーブン・レビンソン デビッド・ウォマーク
- 製作総指揮:ジェフ・スコール ジョナサン・キング
- 原案:マシュー・サンド
- 脚本:マシュー・マイケル・カーナハン マシュー・サンド
キャスト
- マイク・ウィリアムズ:マーク・ウォールバーグ
- ジミー・ハレル:カート・ラッセル
- ヴィドリン:ジョン・マルコビッチ
- アンドレア・フレイタス:ジーナ・ロドリゲス
- ケイレブ・ハロウェイ:ディラン・オブライエン
- フェリシア・ウィリアムズ:ケイト・ハドソン
『ローン・サバイバー』と同じく、監督ピーター・バーグ、主演マーク・ウォールバーグのタッグ作品です。
この二人はそのあと『パトリオット・デイ』や『マイル22』でもタッグを組んでますね。けっしてこのタッグが好きなわけではないんですが何気に4本ともすべて見ています(´ε`;)ウーン…
どの作品も主演のマーク・ウォールバーグがやたらヒロイックに描かれたり、ラストをスローモーションにして感動をあおってたりするのがちょっと気になるのですが、『ローン・サバイバー』はめちゃくちゃ面白かったです。
『バーニング・オーシャン』の感想
ちょっとあっさりめ
本作はおそらく「ディザスタームービー」または「パニックムービー」に分類され、いわゆるジャンル映画的なつくり。悪く言えばありがちなお話、よく言えば定型がある分ある程度は安定した面白さがあります。
とはいえ、ちょっと物足りない部分があったのもたしかで…。
とくに構成が微妙だった気がします。本作はバーニングするオーシャンがウリですが、そのトラブル発生までが長いんです。1時間くらい現状説明に使って残り45分でやっとトラブル発生、ラスト15分でクライマックスの脱出シーンってな具合なんですが、トラブルが起きてそこから逃げる、その肝心な脱出シーンはあまり時間が割かずあっさりしてます(しかも意外と簡単に脱出できちゃうっていう)。
ああだこうだ考えて脱出するのがこの手の映画の一番楽しいところなのになぁ…(;´∀`)
具体的には、どこまで逃げなきゃいけないか(目的地はどこか)、どのルートが通行止めで、どこからなら行けるのか、などがよくわからず、主人公たちがどの程度追い詰められているのかがわかりずらかったと思います。
火の回る速さや、燃え上がる船上での絶望的な光景とか、絵自体には迫力があったので、そうした脱出シーンをもっと練ってくれればさらに楽しめたのになあ。
まあ、そうした劇的展開がない作りなのは実話ベースだからってのはあったのかもしれませんが(;´∀`)
でも、素晴らしい点もいくつかあって。その一つに火災や爆発に巻き込まれる人たちを痛々しく描いたダメージ描写はすごかったです。
特に主人公のボスがシャワー浴びてる最中に爆発に巻き込まれ、裸の状態でダメージを食らうシーンなんか「痛てぇえーー!!」って感じで、それもあって、そのあとボロボロになりながらも指揮を執り続けるボスの姿がより引き立ってました。
実はコトが起きる前の方が面白いかも?
これは見終わってから思ったことですが、本作は後半のディザスターパートよりも、実はそこに至るまでの現状説明のパートの方が面白かった気がします。
今回、石油掘削会社の管理者が、工期を間に合わせるため本来は行うべきあるパーツの耐久テストをすっ飛ばし、パーツ強度に懸念がある状態で強引に作業を推し進めた結果、トラブルが発生したわけですが、普通のディザスターものと違い本作では「管理者がどのように誤った判断を下したか」がとても丁寧に描かれており、映画を見終わった今にして思うと、本作はむしろそこがメインで、その後のディザスターパートはおまけのようものに思えてきます。
管理者のギャンブル的思考
本作では1番上の管理者が工期を間に合わせるためリスクを無視して作業を強行する命令をだし、トラブルを招いてしまうわけですが、こういう人ってどの職場にもいますよね。
IT業界なら開発工数やデバック期間を考慮しないで強引に推し進める人とか、イベント業界なら進行のタイムスケジュールをキツキツで組んで無理やり進行する人とか。
こういう責任者や管理者が後を絶たないのって、たぶん「過去にそれでもうまくいった経験」があるからだと思うんですよね。
なまじ過去の成功例があるから「ダメかもしれないけど、イケるかもしれない。でも強引にいってうまくいったこともあるし、今回もいっちゃえ!」って判断になると思うんですよ。ちょっとしたギャンブル的な思考というか。
この展開は見ててすごい嫌な気分になりましたね。「こういう上司とか管理者ってやだなあ」って思っただけじゃなく、何を隠そうどっちかというと自分もそっちより(ギャンブル思考になりがち)の人間なのでけっこう身につまされたからです。
自分は力のあるポジションにいるわけじゃないですが、それでも以前担当していたプロジェクトの進行管理をしているときに、けっこうむちゃくちゃなスケジュール組んだりして、それでも「イケるイケる!」とゴリ押してたタイプなんで。
この映画のダメな管理者の人を見てたら(同時に自分の悪い癖と重ねながら)、「時間をかけて準備して、堅実にやること」って昨今はネガティブに言われがちだけど、実はすっごい大事なことだよな、と痛感しました。
管理者の間違ったポジティブ思考
もう一つ身につまされたのが、管理者が途中で「異変」を知っても、「きっと計器の故障だろう」と主張し、実際に機械がそれっぽい反応をしたら正確なチェックをせずに「ほらな」と進めてしまうシーンがあります。実際は計器は正確に動いていて、すでに事故の前兆が起きていたのに。
これは、「確証バイアス」というか「間違ったポジティブ思考」になっちゃったのが間違いの原因だと思います。
そして、世の中の事故の大半が、この「間違ったポジティブ思考」と先ほどの「ダメかもしれないが、いけるかもしれない、ならいっちゃえ!」の「ギャンブル的思考」が組み合わさって起きてる気がしました。
いっちゃえいっちゃえの「ギャンブル的思考」+問題が報告されても「うーん、たぶん大丈夫だよ!」の「間違ったポジティブ思考」を持つと、たしかに場合によっては停滞ムードを打破してくれることもあるかもしれませんが、たいていは途中で取り返しのつかない問題も起こしかねない…。
これを肝に銘じておこうと思いました。そして、こういった思考ってたぶん誰でも持つことがある…ということも。
その他の管理者の判断ミス
この映画、ほかにもダメな管理者がでてきます。たとえば、炎上している緊急時にも関わらず、ルールに縛られて判断できない管理者。
彼は、理屈では火災が広がらないように緊急ボタンを押した方がいいとわかってるのに、「緊急ボタンを押すにはさらに上の人間の許可が必要だ」と言って頑なに動かないんですね。その上の人間が火事で死んでいたり、あるいはとっくに避難しているかもしれないのに。ルールに縛らて思考停止状態になってる人がわかりやすく表現されてました。
でも、組織にいてトップダウン形式に慣れている人間(つまりほとんどの人)は誰だってこうなりかねない…と、またまたゾッとしましたよ。
まとめ
本作『バーニング・オーシャン』を思い返してみるともはや管理者の研修の際に教材として見せたほうがいいんじゃないかという気がしてきました。それくらい、ダメな管理者の例が素晴らしいと思います。
ディザスター映画としてはまあまあですが、ダメな管理者映画としてはおそらくベスト級によかった!
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