『パラサイト』~格差社会を描いてるのにエンタメとして超面白い~

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『パラサイト 半地下の家族』の好き度

本作はちょっと変わった作りの映画でした(とはいえ、ポン・ジュノ監督作は『殺人の追憶』しか見ていないのであんまり作風とかはわからないんですけどね)。

鑑賞前、「不穏…(;´д`)!」としか思えないポスターから「まあ犯罪系のサスペンス映画なんだろうな…(´ー`)フフン」くらいの心構えはして臨んだのですが、見ててコロコロ変わる”作中テンション”と、”分類不能のその作品性”には、「え、先が全然読めないんだけど…。コメディ?ケイパー?サスペンス?いったいなに映画なの!?どんな着地するの?!」」と2時間ちょっと翻弄されまくり。見ていて二転三転する展開に完全に面食らってしまいました。

※不穏…としか思えないポスター

※ここから普通にネタバレします。

『パラサイト 半地下の家族』の感想

格差社会のメタファーとしての半地下

本記事の画像:(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

本作でまず気になるのは主人公家族(キム一家)が住む「半地下の住居」ですよね。実際に半地下の家は日本にもたまーに見かける物件ですが(自分も引っ越しの時に内見にいったことがある)、韓国だとちょっと事情が異なるようで、多くの貧困家庭が住む住居の代表になっているとのこと(詳しくは現代新書に載ってます)。

本作でも、あきらかに半地下の家は格差社会の下側を示すメタファーとして使われていました。

例えば序盤。主人公一家は半地下の住居の窓から見える「地上」を見あげながら食事をとっています。地上に見える人がお金持ち、というわけではないですが、それでも仕事をして生計を立てている分、全員が無職のキム一家とは違います。
つまり、見上げながらの食事は、格差社会における位置が地上に見える人たちが主人公一家よりも“すこし上”であることを示している、というふうに見てとれます。

そして、そのあとキム一家が寄生していく格差社会の「最上流」に位置する”富裕層パク一家”の豪邸は「高台」に置かれています。

このように本作では、「半地下」という韓国の格差の象徴を、韓国の時代背景を知らない私のような人たちにも、建物の物理的な配置によって、序盤からわかりやすく「どういう存在か」と伝えてくれていました。

でもこの映画の本当にすごいところは、なんとそこからさらに「”地下”ではなく”半地下”の理由」がわかるようになってるところです。

「だから、”半地下”だったんだ…゚(゚A゚;)ゴクリ」と思わずハッとする展開がクライマックス少し前くに用意されており、そこからのテンションは「別の映画か!?」と思うほど序盤とは全く異なったものになっていきます。

前半はコメディだが、クライマックス前からガラリとテンションが変わる

前半は主人公たちキム一家がIT企業経営者であるパク社長の家に、家庭教師や家政婦、運転手などとして入り込んでお金を取っていく(経歴詐称をしてるが、一応仕事をちゃんとして給料を貰っており盗み等はしない)という展開で、ギャグも多く、笑えて、不穏さは一切ないんですよね。
ていうか、ぶっちゃけ私はこの時点で「あ、なあんだコメディなんだ〜」と本気で油断していましたから。
ところがですよ。そのテンションに慣れたころ、そうですね、ちょうど後半になってしばらしたあたりですかね、ある人物の登場をきっかけにガラッと作中テンションが変わります。

「あれ、ギャグがなかなか出てこないぞ?」と思ったら、どんどんサスペンスとバイオレンスの要素が増え一気に不穏な空気に。個人的にはここらへんから「ど、どう転ぶんだこの映画は…」と全く先が読めず、存分にハラハラさせていただきました(ノ∀`)

WIREDのポン・ジュノ監督インタビューによると「ポン・ジュノ作品はジャンル分けができない」とのことらしいんですが、本作は「ほんとそんな感じ(;´∀`)ワカル~」って感じで「コメディなの?サスペンスなの?ソフトなの?ハードなの?」と、とても困惑しましたよ。しかし、まあジャンルなど存在しないんですね。しいて言うならば、(インタビューにも書いてあるとおり)ジャンルは「ポン・ジュノ映画」ということなんでしょう…(得意げ)。

「諦めにも似た慣れ」描写が刺さった

本作を見てて特に感じたことのひとつとして、人が苦しい状況にいると陥りやすい(と私は思っている)、「諦めにも似た慣れ」というのがよく描かれているなあという点。

例えば、半地下にいるキム一家が食事中に窓から自分たちの家の前で小便をする不届き者を見つけるシーン。息子のギウが家の前で小便男に注意しようとすると、父のギテクはそれを止めて、なかば諦めムードで見過ごすように諭します。もちろん「暴漢だったら危ないから」という理由で息子を止めた可能性もあるんですが、ぶっちゃけそうよりも「しょうがないさ」的なテンションで息子を止めたように見えるんですよね。

このシーンだけで、なんていうか、半地下に住む彼らの色々なことに対する諦めにも似た慣れが見て取れるんです。
とくに父ギテクのそれが顕著なんですよね。息子は一度注意しに行こうしたので、まだそこまで色々なことに諦めモードじゃない気がするんですが、父のギテクはやりすごすことに慣れきってしまってるのがとてもよく伝わるんです。

人って(ていうか”自分は”ですが)苦しい立場にいすぎてしまうと、自己評価が徐々に下がっていき、無礼な態度をとられてもどこかでそれを受け入れている自分が出来上がっていきがちじゃないですか。父ギテクはまさにそうしたモードになっている気がしました。

このシーンが個人的にはけっこう刺さりましてね…。会社を辞めてぷらぷらしてダウナーになってた頃の自分が、まさにそういう精神状態だったので、父ギテクのそうした姿を見ていると心にグサッと刺さるものがありましたよ…(;´∀`)

ソン・ガンホ演じる父ギテクが1番刺さる

そんなわけで、本作を見てて1番心に残ったのは、ソン・ガンホ演じるキム一家のお父さんギテクです。彼の心情の変化しかた、それがとても印象的でした。

ギテクは映画の中盤に「THE 富裕層」のパク社長の運転手としてパク家に入り込みますが、仕事中は(やや口数が多いものの)とても謙虚で、人当たりのいい性格。家族と過ごしてるときも、ちょっと頼りなさそうですがひょうひょうとしていて優しいお父さんです。

しかし、パク家の地下に隠れて住んでいたグンセたちと遭遇したあたりからですかね、徐々にギテクに変化が訪れ始めます。”表面上は互いに尊重してる風だけど、パク社長から内心では見下されている感じ”にギテクはだんだんと意識的になっていくんです。

後半から終盤にかけては、これまでのひょうひょうとしたギテクの雰囲気がシリアスなものへと変わっていくことで、彼がどんどん「格差」や「見下されていること」に意識的になっていくことが伝わってきます。「格差」に意識的になったことで「諦めに似た慣れ」を使って気づかないようにしていた”自尊感情”に意識的になっていった結果、これまでの「やり過ごし」ができなくなっている、そんな風に感じました。

そして、その結果こそが、クライマックスのパク社長へのあの行為につながった…。

ギテクの行為は決して褒められたモノじゃないですが、でも、やっぱり感情移入せずにはいられなかったです。

持つ者は崇められ、結託すべき持たざる者同士で争うようになる

この映画を見ていると「今の格差社会を如実にあらわしすぎてる…」と痛感する展開が多々あります。

世界の資本は1%の超富裕層が半分を握る、なんてことを聞いたことがありますが、パク社長の家はまさにそうした典型的な富裕層。一方、典型的な貧困層であるキム一家。

キム一家はパク社長の家に全員が家庭教師、運転手、家政婦などとして入り込むことに成功しますが、後半に実はもっと前から家主のパク社長たちすら、あるのを知らなかった豪邸の地下室にひそかに暮らしていた別の家族(パク家の元家政婦ムングァンとその夫グンセ)と遭遇します。

で、ここからですよ。どちらもパク家に「嘘」や「隠し事」をして寄生していた二つの家族は、実は利益が相反することなく、結託してこれからもうまくやっていく事ができたんです。にも関わらず、彼らは争ってしまった。それゆえに不幸な事態に発展していくわけです。

結託できたのに争ってしまった理由は「利益を独占しようとしたから」と、「パク家への尊敬の念があったから」だと思うんです。

今の格差社会の怖いところって、”持つ者”つまり“上側の人たち”が「尊敬される対象」や「人としての価値が上」っていう空気になっちゃっているところな気がするんです。

本作ではそうした「金を持ってる方が価値が上」的な怖い空気をキム一家とグンセたちの対立で見事に表わしていたと思いました。

いや、そりゃリスペクトしてしまう気持ちもわかりますよ、やっぱり資本主義社会ではどうしたって、いっぱい金を稼いでる方がエライとか上って雰囲気がありますから。
でも、人の評価の基準が「金(収入や財産)」になってしまっているのって「やっぱり健全な社会じゃないでしょ」って気がするんですよ(もちろん、金を稼ぐ力はスゴイ事の一つだとは思いますが)

だからこそ、ギテクの最後の行いには、全然肯定はできないけど、でも感情が揺さぶられずにはいらませんでした。

ラストの展開

とまあダラダラと書きましたが、本作は半地下や地下室、高台の家、階段といった住居を使って、格差社会というベースとなるテーマを描きつつ、コメディ要素や、ケイパーもののハラハラ感、サスペンスのようなドキドキ展開もあって、エンタメ性も非常に高かったです。しかも扱ってる題材が題材なのに、社会派映画の堅い感じじゃないんですよね。それでエンタメとしてめっちゃ面白いってほんとすごいことですよね。

そしてなによりラストのうまさ…。一見するといろんなジャンルがミックスされてて、話がどうなるかわからない…という作りなのに、見終わって改めて作品全体を思い返してみると「起承転結の構成がお見事すぎる」というね…。

一言でいえば、

ポン・ジュノやべえ゚Σヽ(`д´;)ノ !。

ってことですよ。そんな、しょうもない感想で締めたいと思います。

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