『フォードvsフェラーリ』の好き度
車にほぼ興味がない私がですが「アカデミー賞ノミネート作だし〜(´ε` )」くらいの軽いミーハー魂で、『フォードvsフェラーリ』観に行ってきましたよ。
いやはやしかし、映画を観終えたら「車って、やっぱいいよね…」としたり顔で言いたくなるくらい、いい映画でしたよ。
なんていうか出てくる車がどれもこれも魅力的に映ってて、単純にデザイン物としてかっこよかった…(*´ω`*)ホクホク
あと、スピード感の演出も最高でした。私は自分で運転するときはきちんと法定速度を守って絶対飛ばしたりしない”ド真面目タイプ”なんですが、だからこそ「スピード感」への憧れはあって…。「いつかサーキットなどの合法的かつ安全が確保された場所で、時速300キロくらいを体験してみたいなぁ…(´∀`)」なんて思っていた自分には、本作はその疑似体験をさせてもらう最高の機会になりましたよ。
『フォードvsフェラーリ』のスタッフ・キャスト
スタッフ
- 監督:ジェームズ・マンゴールド
- 製作:ピーター・チャーニン、ジェンノ・トッピング、ジェームズ・マンゴールド
- 製作総指揮:ケビン・ハローラン、デーニ・バーンフェルド、マイケル・マン
- 脚本:ジェズ・バターワース、ジョン=ヘンリー・バターワース、ジェイソン・ケラー
キャスト
- キャロル・シェルビー:マット・デイモン
- ケン・マイルズ:クリスチャン・ベール
- リー・アイアコッカ:ジョン・バーンサル
- モリー・マイルズ:カトリーナ・バルフ
- ヘンリー・フォード2世:トレイシー・レッツ
- レオ・ビーブ:ジョシュ・ルーカス
- ピーター・マイルズ:ノア・ジュプ
- エンツォ・フェラーリ:レモ・ジローネ
『フォードvsフェラーリ』の感想
『フォードvsフェラーリ』というよりも…
このページの画像すべて:(C)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation
本作は、『フォードvsフェラーリ』という名前ながらこの自動車メーカー2社の対決自体にはあまり焦点が置かれません。「フォードが自分たちの車を売るために”ル・マン”のレースでフェラーリに勝つぞ!」となって主人公の天才ドライバー・マイルズと元天才ドライバー(現カーデザイナー)・シェルビーを雇うところまではタイトル通りって感じですが、そこからはむしろ、「雇ったフォード側」と「雇われたマイルズ&シェルビー側」の戦いに焦点が置かれていきます。「企業」vs「現場」、「経営陣」対「現場」、「スーツ組vsつなぎ組」、「金」対「名誉」みたいな構造とも言えるかもしれません。
フォードが悪役のようになった原因の副社長
そんなわけで、一応フォードがファラーリにレースで勝つ!というのが物語のゴールになっているものの、途中からフォードがまるで主人公マイルズ&シェルビーらの敵かのような構造になってくるわけですが、その1番の原因はビーブ副社長だと思います。この副社長がとにかくタチが悪いヤツでして…。
「もう、たいしてわかってないんだから黙っててよ!」と言いたくなってしまうタイプの上司っているじゃないですか。まさにそのタイプです。十分な知識や知見がないのに、「自分の手柄にしたい」「自分の意見を盛り込んで、自分の仕事にしたい」みたいな欲から、完全に不要なアドバイスを言ってくるタイプですよ。しかも知識はないけど権力はあるから、なお厄介というね(;´д`)
ビーブ副社長のせいで、上映中に前の会社の上司を思い出して気が狂っていたので、映画の2〜3分は記憶にないです(*´∀`*)
逆にここまで嫌な感じに見せた脚本や演出、副社長役のジョシュ・ルーカス氏は称賛モノですよね(゚A゚;)。ちみみに副社長、実際はあそこまで嫌な奴じゃなく、むしろいい人らしいです…。副社長について詳しくはTHE RIVERの記事を参照してみてくださいな。
フォードが悪役になると際立つのは、マイルズとシェルビーの友情
実際は良い人っぽかった副社長を嫌なヤツにしてまでフォードを悪役にしたのは、本作ではやっぱりマイルズとシェルビーの結束が重視されたからだと思います。彼らの雇い主であるフォードが悪役になればなるほど、逆に現場の二人の絆は強くなっていくんですよね。
彼らの友情が描かれてるシーンで特に心に残ったのは、マイルズの家の前の芝生で彼らが取っ組み合いの喧嘩をするシーンです。シェルビーがフォード側の命令でマイルズをある大会のメンバーから外すものの、結局レースで結果がだせずやっぱりマイルズの力が必要だと悟って改めてメンバーに戻るよう伝えにいくシーンです。
シェルビーが謝るもののマイルズは殴りかかり、そうされたらさすがにシェルビーも殴り返す!そこからは二人で取っ組み合いの喧嘩ですよ。でも、決して相手を憎んでの喧嘩じゃなくて、なんていうんですかね、仲直りのための通過儀礼としての喧嘩であり、お互いがそれを理解した上での取っ組み合いなんですよね。だから、どっちもガチではないわけです。
その証拠にマイルズがシェルビーに反撃しようと自分の持っていた買い物袋から落ちた缶詰を手に取りますが、それは捨てて柔らかいお菓子の袋に持ち替えるシーンとかが入ってたりします。これは通過儀礼の喧嘩なのだから缶詰はやり過ぎって事をマイルズもわかってる、という事がこのことからも伝わってきます。なんか「友情ってやっぱいいよね( ´∀`)bグッ!」とほっこりしたシーンでしたね。
男ばかりでてくる話だが、唯一の女性の描き方がよかった
そんなこんなで本作は男同士の汗臭い友情話なわけですが、それを抜きにしても、「1960年代」「自動車業界」ということもあり、本作はまあ、ほとんど男しかでてきません。
しかし、そんな中で唯一といっていい女性、マイルズの妻、モリー・マイルズの描き方がとてもよかった。
1960年代半ば、ウーマン・リブなどがあったものの基本的には男社会の色が強い世の中だったと思いますが、モリー・マイルズはとても強く自立した女性として描かれていました。
彼女まわりのエピソードで好きなのは、夫ケン・マイルズとドライブしているシーンです。ハンドルはモリーが握っており、ケンは助手席に。運転中のモリーが、レースドライバーにスカウトされた事を黙っていたことケンを責めます。彼女は激昂してアクセル踏みまくりでケンがビビりまくる、というエピソードなんですが、レース中は圧倒的なスピードで走るケンを奥さんがビビらせまくる、という「モリー強い!」と思わず笑っちゃうエピソード。もちろん、モリーは強いだけじゃなく優しさもある女性として描かれていて、とても魅力的です。
そう考えると、この映画モリーもいいんですけど、実は夫のケンも昔ながらの家父長制の悪い典型の”すぐキレる親父”とかじゃなく、頼もしいけど奥さんや子供に優しいし男性として描かれているんですよね。この二人、すごいかっこいい夫婦でしたね。
クライマックス、走ってる車を見てるだけで面白いってすごい
本作は後半1/4くらいがクライマックスのル・マンでのレースシーンになります。ル・マンは24時間耐久レースでもあるので、レース描写は長いです。が、結果、全然退屈しなかった。サーキットのピットにいるメンバーと客席でのフォード側とのいざこざなどがありますが、基本はただ車がぐるぐるコースを周り続けてるだけなのに、こんなに手に汗握るのかよ!!ってくらい興奮しました(;゚∀゚)=3ムッハー
レースシーンは、フロントウィンドウ越しのドライバーのアップ、ドライバーの主観視点、地面からの視点、車の5mほど前から撮った視点など、けっこうオーソドックスな撮り方が多い気がしましたが、一方で車の上空、真上から撮って左右の車が抜きつ抜かれつのデッドヒートを繰りひろげる…、って視点はほぼなかったような。つまり、けっこう地上に近く、車に接近した視点での描写が多かったと思います。だからこそ、よりスピードを感じられ迫力があったんでしょうね。
まあ、そのぶん「クラッシュシーン」や「抜いた・抜かれた」など、レース中に何が起きてるかわかるかわからないかのギリギリのライン!でもあったと思います。
でも、肝心のフォードとファラーリの勝負だけは、車体のカラーリングが青と赤で対照的だからマイルズが運転するフォード車が抜き去った瞬間はハッキリわかるようになってました。その瞬間の爽快感はとても素晴らしかった!
まさかのラスト
本作は実話ベースでありながら、私自身はまったく知らなかったお話のため、ラストのマイルズが車のテスト中に事故死する展開には面食らいましたし、2時間ちょっとの間で完全にマイルズとシャルビーの友情にほだされていたのでとてもショックでしたね。
でもラストシーン、シェルビーがマイルズとの思い出のレンチをマイズの息子ピーターに渡し「前を向くこと」を決めて、冒頭と同じように勢いよく車を発進させるところにはぐっときましたよ…。良いラストでしたね。
そんなこんなで、車好きじゃない自分でもめちゃくちゃ楽しめたいい映画でした〜。
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