『ゼロ・ダーク・サーティ』の好き度
終始緊迫感がある映画で、2時間半以上あるんですけどすぐ見終わってしまった印象です。それくらい面白かった(;´∀`)!
内容はCIAがビンラディンを見つけ出し殺害するまでのミッションを描いたもので、実話に基づいたフィクションです。ジャンル的には、アクション映画といえばそうなんですが、いかにもなハリウッド大作アクションではなくドキュメンタリーに近いシリアスなトーン。
また、主人公の女性CIA職員マヤが男社会の組織の中で男どもを蹴散らしながらゴリゴリに捜査を進めていく、一種のお仕事ムービーでもあります。
『ゼロ・ダーク・サーティ』のスタッフ・キャスト
スタッフ
- 監督:キャスリン・ビグロー
- 製作:マーク・ボール、キャスリン・ビグロー、ミーガン・エリソン
- 製作総指揮:コリン・ウィルソン、テッド・シッパー、グレッグ・シャピロ
- 脚本:マーク・ボール
キャスト
- マヤ:ジェシカ・チャステイン
- ダニエル:ジェイソン・クラーク
- パトリック:ジョエル・エドガートン
- ジェシカ:ジェニファー・イーリー
- ジョージ:マーク・ストロング
- ジョセフ・ブラッドリー:カイル・チャンドラー
- ラリー:エドガー・ラミレス
- ジャック:ハロルド・ペリノー
- ハキム:ファレス・ファレス
『』の感想
圧倒的にリアルな空気感かつ、客観的で淡々とした語り口
本ページの画像はすべて:Jonathan Olley (C)2012 CTMG. All rights reserved
戦場の圧倒的な現地感、いつコトが起こってもおかしくない緊張感、CIAの現地拠点(職場)のピリついた空気など、実話をもとにしていることもあり、同じキャスリン・ビグロー監督の『ハート・ロッカー』と同様で本作も作中にリアルな空気がビンビンに漂っています。普通のアクション・エンタメ映画とは比べ物にならない!
また、本作のもう一つのいいところとして、ドキュメンタリーちっくな作りでもあるためか、どのシーンにも”登場人物の想いが載っかっていない”ところが挙げられるかと思います。映画全体が誰にも肩入れせず、ただ淡々と起きていることを映している、とでも言いますか。でてくる人間全員と距離をとっている印象です。それが本作は政治色がない、と言われている所以かと思います。プロパガンダやCIA勧誘的な要素が全くといっていいほどないです。
どのようにビンラディン殺害計画の流れがわかりやすく描かれている
本作は2時間半もありますが、構成はとてもわかりやすいです。主人公マヤがどのようにビンラディンの居場所を突き止め、アメリカがどのようにビンラディンを殺害したか、がとてもわかりやすく語られており、私のような「ビンラディン殺害」に関する詳しい知識がない人間でも混乱せず見ることができます。
実際に起きたことを調査して作られている映画なので、ドキュメンタリー的であり、構成はある時期のあるエリアでの出来事をぶつ切りに並べたような作りになっています。
完全なフィクション映画のようにうまい伏線があったり、どんでん返しがあったりするわけではなありません。
にもかかわらず、中盤での自爆テロシーンや、ラストでの襲撃シーンなど、映画的な山場といえるような箇所がたしかに存在しており、話として(この言葉は不謹慎かもしれませんが、でも確かに)面白いんですよね。また、なかなか決断をしない上を下の者が動かすための政治的駆け引きも描かれており、アクション要素以外も面白いです。
マヤの狂気じみた執念
主人公マヤはCIAの女性分析官ですが、彼女は現地パキスタンに到着した当初こそ、拷問などに面食らっていましたが、同僚であり友人でもあった女性分析官を自爆テロで亡くしたあたりから、ビンラディン殺害へ向けて過集中ともいえるような状態になっていきます。
プライベート無しですべての時間をビンラディンを見つけることに注いでいく彼女からは狂気さえ感じました。彼女の提案にたいして決断できない上官へは毎日プレッシャーをかけ続ける(上官の部屋のガラス張りの壁に、マジックで「コトが進展していない日数」を毎日書き込んでいく)姿は、完全にゾーンに入っている感じで、着任当初とは別人でしたね(;´∀`)
マヤが男だらけのCIAの中で際立って“できる人”なので、一見すると女性が男社会で能のない男たちを圧倒していく系の話にも見られるんですが、個人的にそうじゃなくて、「目的に対してどれだけ本気か」その覚悟が圧倒的にスゴい人は女性だろうが男性だろうが周りとの温度には差ができてしまう、という事だと感じました。
よくある例では、学校の運動部などで「優勝することを意識してる部員」と「ぼんやりと勝てればいいと思ってる部員」では圧倒的に覚悟や態度に差がつく、みたいな構造が近いかと。
ラストのラストもニュートラルな姿勢
そんな過集中状態であったマヤですが、ラストのラスト、ビンラディン殺害ミッションが終わり、ついに帰還することになった際は一種の虚無状態になっていました。その場面だけ見れば「燃え尽き症候群」的なものに見えなくもないですが、本作を見ていれば、彼女のそれが復讐を終えた人間のその先に残る「果たしてこれでよかったのか…」といった迷いであることが伝わってきます。
ここも、変に「ついに成し遂げたぞ!」といった空気にしてエモーショナルな音楽を流して…みたいなことを一切せずニュートラルな姿勢が貫かれたいい演出だと感じました。
どう見つけたか、どう襲撃したか、その細部を描いていたのがよかった
大規模な捜査、決死の捜査で見つけた、などといった感じではなく、どういう手法でビンラディンのアジトを見つけたかをきちんと描いてくれていたのはとても良かったと思います。衛星でなんでも見られる時代でも、電話の傍受→今電話をしている人を街で探す、といった足を使っての捜査をして手掛かりとなる人間を見つけたのか、など新鮮さがありました。
また、パキスタンにいるビンラディンをアメリカ兵がパキスタン側にバレずに襲撃しないといけないわけですが、そのためにエリア51がでステルスブラックホークを作ったりしている描写も、「エリア51でてきたよ…しかもステレス仕様のブラックホーク!」と本題とは関係ないところで衝撃をうけましたヾ(*´∀`*)ノキャッキャ
ラストの襲撃は実際の映像のよう
ほぼリアルタイムで描かれているラストのビンラディンのアジトの急襲シーンは(となると襲撃から、資料回収、撤退までが相当早い)、実際の映像のようでした。主観ショットっぽかったり、暗視スコープ視点だったりゲームっぽい感じの映像と言うとイメージしやすいかもしれません。ここでもアメリカを礼賛する雰囲気は一切ありません。むしろ、射殺シーンもしっかり映すので陰惨さが際立ちました。このシーンがあったからこそ、ラストのマヤの虚無状態が余計にわかる感じになっていると思います。
まとめ
ゼロダークサーティは史実に基づいた国家レベルの対立を描いた映画でありながら政治的な色はなく、エンタメ的に見ても非常に面白い映画だったと思います。個人的にはマヤの過集中状態の鬼気迫る感じがスゴイ好きでした。
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