前情報はいっさい無しで観たこの映画。
惚れっぽい男(というか大抵の男は掘れっぽいと思う)の“トム”は、グリーティングカード(お祝いやお悔やみの時などに送るカード)の会社に勤めている。
ある日、会社に新人の女性がやってきた。“サマー”という名前で、カール気味の髪で透き通った目をしていて可愛いけれど、どこかクールで人を寄せ付けない様な印象だった。
トムはサマーに話しかけられ、持ち前の惚れっぽさで一気に好きなる。そしてうまくいって付き合い始めるけど、二人の恋愛観が全然違う事により徐々に関係にヒビが入ってきてしまって…。主人公がこの500日の経験を通して学んだこと、見えてきたこととは…。それこそがこの映画のテーマ。
恋愛の序盤とかで二人の気持ちがまだ十分に盛り上がっているときって、お互いの恋愛観が違っていようとそこがまだ表面化する前だから楽しいですよね。トムがサマーと付き合えた直後の描写も、そうした恋愛の楽しい面がエンターテイメント感たっぷりに描かれていて観てる側にもハッピー感が伝わってきます。特に、主人公が上機嫌で街を歩いていると街中の人が彼にハイタッチをしたり一緒に踊ったりするシーンなんかは「さすがミュージックビデオ出身のマークウェブ監督!」と思います。(ちなみに余談ですが、映画『モテキ』の大根監督も『モテキ』主人公の幸世が劇中でPerfumeとダンスをするシーンを『500日のサマー』のオマージュと語っていた)。好きな子とデートに行くことが決まった!付き合えた!そういった系の喜びを思い出せるシーン。
一方でサマーとの関係にヒビが入ってしまうシーンの、街が灰色に染められていく描写もミュージックビデオ的なオシャレな映像です。ここも世界というものが“暗く希望のないもの”になってしまったことが観ている側にも伝わってきます。
他にも2画面で「理想」描写と「現実」描写を比較して見せるシーンなんかも新鮮でしたし、映像演出は総じて素晴らしかったです。
また、役者陣の演技も「結局、美男美女の恋愛でしょ?」などといった風には見えず、非常に身近な人達のよくある恋愛話を観ている気になる自然で愛着が湧くものでした。
最後にこの映画を観て思ったことを…。
ずばり
「“運命”というのはうまくいった偶然に後から付けた名前にすぎない」
ということです。
偶然の中にはうまくいくこともあるしうまくいかないときもある。人との出会い、それは偶然でしかない。出会った人と気が合うかどうかも偶然でしかない。何回も偶然が重なればうまくいくこともたまにはあって、それを「運命の相手」と語るのだろう。途中でダメになったりしたら「運命の相手だと思ってたのに」などと語るのかもしれない。でも、運命なんてものは、私たちが思ってる様な「始めから決まっていた出来事」ではなく、うまくいった偶然に後から付けた名前に過ぎないんではないか。
だから、ある一つの「人との出会い」という偶然がうまくいかなった時は、もはやその偶然に“運命”という名前が付くことは無い。だからこそ人生で数ある“うまくいかなかった偶然”の一つに固執せず、「次の偶然に出会いにいく」ことが大事だと…。
でもまあ、あくまでそれは理屈なわけで、ブレークハートはいくら理屈付けしたところで簡単には治らない。うじうじしたり、泣き叫んだり、お気に入りのベンチで遠くを見たり、この映画の主人公みたいにそうしたことをして過ごす期間も必要なわけです…。
まあ、とにかく、面白い映画でした!
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