『はじまりのうた』 〜音楽って本当にいいものですね…〜

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主演は『つぐない』や『プライドと偏見』で主演を演じ、世界的大ヒットとなった『パイレーツ・オブ・カリビアン』のエリザベス役でも有名なキーラ・ナイトレイ(29)と
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『フォックスキャッチャー』のデイブ・シュルツ役や『アベンジャーズ』のハルク役のマーク・ラファロ(47)。
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イギリスから一緒にアメリカにやってきた彼氏に他の女ができ、失恋した大学生でシンガーソングライターのグレタ(キーラ・ナイトレイ)。まだ癒えていない傷を抱えながら、グレタは薄暗いライブハウスで優しくせつない歌声を響かせていた(キーラ・ナイトレイの歌声が実際、本当に優しげでいい)。

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そんなグレタの歌を聴いていたのが音楽プロデューサーのダン(マーク・ラファロ)。ダンは夫婦関係もうまくいかず、自身で立ち上げたレーベルからも解雇され、完全に自分を見失っていた。勢いで入ったライブハウスでグレタの歌に出会い、彼女の歌声に感動しCDデビューの話を持ちかける。

デビューを持ちかけたはいいものの、レーベルをクビになったダンに当然金はなく、レコーディング・スタジオなどは借りられない。そこでダンは、レコーディングをスタジオではなくニューヨークの街中で行おうと提案する。

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グレタの昔馴染みのアーティスト仲間や、音大の学生、ピアノ教室の先生など雑多に仲間を引き入れ、セントラルパークや、橋の下、路地裏、ビルの屋上、電車が行き交う地下鉄のホームなど街の至る所で、たくさんの「街の音」とともに、音楽の素晴らしさを実感しながら、ダンとグレタ達はレコーディングを重ねていく。

そして、一見めちゃくちゃに見えたこの企画によって、グレタとダンは徐々に前を向いていく。そして、ついにアルバムが完成した時、二人はそれぞれ新たな一歩を踏みだす・・・。

心に傷を持つもの同士が音楽によって少しづつ前を向こうとしていく様が、楽しくリズムカルに描かれていた。

音楽をセッションしている姿や歌っている姿は実に楽しそうで観ていると「自分も楽器を弾けたら…」と心底思う。

しかし、楽器を弾けなくたって音楽には「聴く」という楽しみ方もある。

劇中にも、グレタとダンが自分たちのiPodを持ち寄りイヤホンを分岐させてお互いのプレイリストを一緒に聴くシーンがあるが、グレタは「プレイリストを見せるのは自分の中身を見せている様で恥ずかしい」という様なことを言う。まさにその通りだろう。

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よい音楽にはしっかりとメッセージが込められている。自分がどんな音楽を聞いているかというのは、自分がどんなメッセージを欲しているかというのと同義だ。それをさらけ出すのだから当然恥ずかしい…。

しかも彼らの見せ合うiPodのプレイリストは、完全に自分用。ドライブデートの時にかける音楽の様に、助手席の誰かに聞いてもらうことを前提に外面良く作り上げたプレイリストとは訳が違う。

このプレイリストを見せ合うシーンは、二人が心を許し合う決定的な場面だと思う。彼らは男女の仲にはならないけれど、ある意味それ以上の関係がこの場面で出来上がっている様にも見える(なんていうかこのシーンの二人を端から見ていると、本気で恋する5秒前に見えてしまう)

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今言った通り(ダンが既婚者ということもあるが)、グレタとダンの男女としての関係性は映画の中では手を繋ぐだけにとどまっている。男女としての関係性はそこまでしかいかないのだ(キスシーンも撮っていたらしいが最終的にカットされている)。

それがとてもよかった。

それにより、新たな恋によって前の恋の痛みを乗り越える様な再生物語ではなく、音楽の力によって人が再生していく物語になっているからだ。グレタとダンが恋仲になってしまったら「なんだ結局、そっち(恋)の力かよ」とドッチラケになってしまう。

恋愛は確かに気持ちを高揚させてくれるけど失恋という大きなリスクも持っているわけで、新たな恋に救いを見出してもそれは新たな悲しみの始まりともとれる。だから、もしも二人が恋仲になる展開だったら、観ている側に「その立ち直り方だと、別れたらまた同じことになるのでは?結局何も成長してなくない?」と思わせてしまっただろう。

立ち直るきっかけが「音楽」であることで、音楽の持つ強靭な「力」がすごく感じられた。

 

音楽は聴覚という鋭敏な感覚を通って私達の頭に届く。

本も視覚を通るけど、文字を脳みそで解読するステップがあるから、音楽の方が遥かに直接的に響く。

だからこそ、人の気持ちを一瞬で変えてしまえるのだろう。

心がズキズキ傷んでいても、いきなりその人に救いを差し伸べられる。

それが音楽のいいところであり、本作品はそれを強く感じさせてくれる。

今作、上映館が少なく、しかも上映期間も結構短くてもうそろそろ上映終了となる。

見逃した方はぜひDVDで。

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