白泉社の『ヤングアニマル』で連載している将棋を題材にした漫画『3月のライオン』。
中学生でプロになり、現在は現役高校生プロ棋士として生きる桐山零(きりやま・れい)。
そんな彼が一癖も二癖もあるライバル棋士と、全身全霊を懸けた戦いを繰り広げ棋士として成長していく様を描く。また零は幼い頃に家族を交通事故で亡くしていたこともあり、自分以外の人間と距離を置いて生きてきたが、近隣に住む親切な女系家族の川本家と偶然交流を持つようになり、そこでの温かな交流で人間的にも成長していく様が描かれている。
最近、暇さえあるとこの漫画ばかりを読んでいる…。
将棋自体が好きだから、というのもあるけれど、それよりもこの漫画の世界の雰囲気がすごく良いからだろう。
この漫画を読んでいて思うことは、この世界には嫌な人もいれば良い人もいる、ということだ。
嫌な人がたくさん出てきて救いながない漫画は「まさに、我々の世界そのもの」と思わせてくれるから、そういった意味ではリアリティがあって面白いけれど(ウシジマくんとか)、精神的に参ってる時には読むのが結構きつかったりする。
一方で、出てくる人皆がいい人だったりすると、そのあまりのご都合主義的でファンタジックな世界観と現実世界とのギャップにヘコんでしまったりもするものだ。
あぁ…現実もこんなに都合よくいけばいいのにな…的な。
でも、『3月のライオン』は全員悪者といったアウトレイジでもないし、みんながいい人といったファンタジーでもない。非常に可愛らしい絵とみずみずしいセリフで、温かく楽しいだけの作品に思いがちだが、子供を捨てる親、養子を受け入れられずいじめてしまう実子、同級生を転校させてしまう程のいじめをする中学生、若手棋士に八つ当たりをする中年棋士…と、決していい事と言えないことをしてしまう人間も描かれているし、一方で、難病と戦う棋士や、主人公の零の様に家族を失った人達が、時に折れそうになりながらも、強靭に力強く生きていく様だって描かれている。
私たちが生きていると必ずぶち当たる影と光の双方がこの漫画には描かれているのだ。
けれども漫画全体として見ると、前向きで温かい世界観になっているという、このバランスの良さ。
ファンタジーすぎず適度にリアル、だからこそ、この漫画に描かれいている希望は、「現実世界にもこうした希望はきっとあるんじゃないか?」と思わせてくれる。
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